市の財政難の穴埋めに、地方債や一時借入金を語るトンチンカン

久喜市が永年にわたって公共施設の修繕や維持管理費を削減してきた結果、多くの公共施設で老朽化に歯止めがかからず、雨漏りや外壁のひび割れが目立っている。
 特に小中学校の校舎で、外壁の落下が相次いだほか、10校以上もの学校で雨漏りが発生した。
 建築基準法の法定点検で23校が「屋上防水劣化」を指摘され、その中で新たに雨漏りが発生している学校もある。
 市の財政がどんなに厳しくても、改修の促進に一刻の猶予もない状態だ。

 市は今年度の予算で、公共施設の改修費に60億円を計上し、そのための財源にあてるため、前年度には34億円積み立ててあった財政調整基金のほとんどを取り崩し、アセットマネジメント基金も取り崩し、減債基金はゼロとなった。

 5月26日、BS-TBSで、久喜市の“ひどい実態”が放送された。
 梅田市長のインタビューも電波に乗った。
 財政調整基金が逼迫していることを踏まえて、今後の財政運営をどうするのかと問われた市長が何と答えたか。
 何と、市長自身の口で『さまざまな金融機関から借り入れることができる』と語って、すぐに番組の中で『子どもたちにツケを回していいのか』と批判されるありさまであった。

 しかし地方自治体は、地方財政法で市債発行は厳しく制限されている。

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 第5条 地方公共団体の歳出は、地方債以外の歳入をもつて、その財源としなければならない。ただし、次に掲げる場合においては、地方債をもつてその財源とすることができる。
一 交通事業、ガス事業、水道事業その他地方公共団体の行う企業(以下「公営企業」という。)に要する経費の財源とする場合
(一部省略)
五 学校その他の文教施設、保育所その他の厚生施設、消防施設、道路、河川、港湾その他の土木施設等の公共施設又は公用施設の建設事業費・・・(以下省略)
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 財政の赤字を埋めるためや、財政調整基金が枯渇したから、その穴埋めに地方債の発行はできないことになっている。
 事実上、新たな公共施設の建設という目的以外に、地方債発行はできないのである。

 梅田市長が財政調整基金の枯渇に対する考え方を問われたのに対して、安易に「借金」を口にしたのだったが、地方財政法の規定や地方財政の仕組みを知らないで発言したのではないか。
 知っていれば、『さまざまな金融機関から借り入れできる』などと言うはずはないのだ。

 6月市議会で、貴志議員が梅田市長の見識を問うたのに対して、今度はさらに驚くべき答弁をしてみせた。
 梅田市長は、TVでの発言は『市債の発行のことを言ったのではなくて、一時借入金のことを言った。TVでは十分に伝わらなかった』と弁解したのである。

 しかし、これはますますおかしい。
 地方自治法で定める『一時借入金』とは、歳入と歳出のタイムラグが生じて、たとえば業者への支払いの現金が不足したときなどに、文字通り「一時的に」借り入れるものである。
 年度内に返済しなければならないから、これを予算の財源とすることはできない。
 市の何らかの事業のための予算にあてることもできないので、財政難の対策には使いようがないのである。
 だから、財政調整基金の枯渇と、公共施設の改修などを含めた事業の財政困難を問われたのに対して、「一時借入金」を持ち出したのだとすれば、全くかみ合わないトンチンカンな説明になってしまう。

 久喜市を現在襲っている財政難の対策としては、地方債の発行も事実上できないし、「一時借入金」は対策にもならない。
 もしかして、梅田市長は、地方債の発行が難しいことも、「一時借入金」がどのようなものであるかも知らないで、その場その場でいい加減な言い訳を重ねているだけではないか。
 もっともらしい説明をするたびに、久喜市の財政困難の対策を何も考えていないことを、みずから暴露してしまっている。
 梅田市長はそのことを自覚していないようで、自分の発言のトンチンカンにも気付いていないのではないか。

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