1.
4月に日本創成会議が「地方自治体『持続可能性』分析レポート」を公表した。
通常は、「消滅可能性自治体」リストとも言われていて、リストに入っていなくても、それぞれの自治体がどのような人口見通しのもとにあるのかを知ることには意義がある。
2014年に続いての発表だが、前回のときほど深刻に受け止める向きは少ないようだ。
「消滅可能性」と言っても、人口が減っていって、それで直接に自治体がなくなるわけではない。
地方の自治体において、現在の過疎化がさらに進行するという程度にしか感じていない人も多いであろう。
しかしこの問題は、少子化がいっそう進行して、高齢化率が急上昇することによって、地域社会のあり方そのものが変わってくる、政策のあり方も変わってくる、その転換をどう進めるかという捉え方をしなければならないのだろう。
2.
たとえば、久喜市は「消滅可能性自治体リスト」には入っていないし、近い将来において「消滅可能性」に近づいていくこともないだろう。
だからといって、今回のリストの発表を無視していていいわけではない。
特に、今回の分析および発表の柱である「若年女性人口減少率」の動向には大いに注視する必要があるし、人口移動による社会増・社会減を除外して、自治体の現在の人口構成を分析して自然増・自然減がどうなるかを分析する視点は、久喜市にとっても示唆に富んでいる。
久喜市では、今回発表された2020年から2050年の人口動態の分析結果から、何がわかるか。
久喜市の総人口は、2020年の15万0582人から、2050年には、社会増・減を加味すれば11万7103人(22%減)だが、人口流入を除外した自然増・減で想定すると10万9800人(27%減)となって、人口減少はより大幅に進行する。
20~30代の若年女性人口は、2020年の1万4467人から、2050年には人口移動を加味すると9292人(36%減)だが、自然増・減で想定すると8995人(38%減)で、減少傾向はより深刻だ。
そもそも、2020年でも、若年女性人口は久喜市の総人口の9.6%しかいないのが、自然増・減の推移の元では2050年には8.2%にまで減少すると見込まれていることに危機感を抱くべきかも知れない。
3.
次に、今回の発表とは別に、久喜市の過去10年間の人口の推移と、若年女性人口の推移を見てみよう。
現在(2024年4月)において、久喜市の若年女性人口は女性人口全体の19%しかいない、それは20~30代の男女合わせた人口割合約20%よりも低い。
そして、10年前(2014年)には若年女性人口は市の女性人口全体の23%を占めていたのだったが、10年間で4%も低くなってしまっている。
人口全体の推移は、2014年15万4997人から、2024年15万756人へ2.7%減になっている。
これに対して若年女性人口の推移は、2014年1万7729人(22.9%)から、2024年には1万4511人(19.2%)へ、3218人(18.2%)も減少した。
人口全体が10年間で2.7%の減少にとどまっているのに対して、若年女性人口が18%も減少したということは、久喜市では子どもの数はもはや加速度的に減る一方だと言うことを意味するのではないか。
実際、2024年4月の0歳児(転入を含む出生数)は724人で、2014年の0歳児は1022人もいたのだったが、10年間で出生者数が30%も減っているのである。
ここから久喜市の人口の維持を政策目的とした場合の政策課題が導き出されてくる。
それは、市内でいかに出生者数を増やすか、若年者(女性だけではない)に久喜市に住んでもらって、久喜市で子育てをしようという、まちの魅力をいかに創造するかである。
4.
一方で、「久喜市は今年、人口増に転じた」という幻想がある。
久喜市の2024年4月の人口は15万0756人で、2023年4月の15万0740人よりも16人ほど増加したというのである。
2022年4月は15万1203人で、22年度中は減り続けていて、23年4月に15万0740人にまで減少したが、23年度中は増減を行ったり来たりして、24年4月は15万0754人となったから、減少に歯止めがかかったと見える。
今後どうなるかはわからないが、東京を中心とした首都圏では人口増の自治体も多いから、埼玉東部に位置する久喜市の人口も単純に減少し続けるというものでもないだろう。
問題は「人口増」の中身である。
23年から24年4月の1年間で、久喜市の総人口は「16人増加」したのだが、内訳を見ると、久喜市の総人口の内、日本人の人口は23年4月に14万7239人だったが、24年4月は14万6740人で、499人も減少している。
それではなぜ総人口が増えたのかというと、外国人の増加である。
23年の外国人が3501人だったが、今年4月には4016人で、515人も外国人の人口が増加しているのである。
ついでに記しておけば、外国人人口は2014年には2016人だったから、10年間で2000人増で倍近くになっている。
この間、日本人人口は2014年に15万2981人から今年は14万6740人へと6241人も減少しているのである。
地域的に人口が増えているのは上内地区と南栗橋であるから、これは何を意味するかというと、市内で子どもが生まれて人口が増えたのではなくて、外部からの流入人口の増加、中でも技能実習生などの外国人労働力の流入によるものが大きいと考えられる。
こうした久喜市の人口動態の中身をきちんと分析した上で、今後の人口政策を検討していかなければなるまい。
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