本町集会所・東町集会所の廃止賛成の議員の論理

 久喜市長の公共施設「削減計画」

 久喜市は市の公共施設の長期的な維持管理や更新、統廃合を「公共施設個別施設計画」として策定している。
 梅田市長になってから策定したのだが、要するに公共施設の維持管理費を削減することを目的として、公共施設をできるだけ削減していく、統廃合を進める計画である。
 自治体にとって必要な計画ではあるが、問題は公共施設の適切な維持管理と統廃合を進める上で、どのような観点至って進めるかである。
 本来は、その施設を維持し存続するか、あるいは削減し統廃合するかの判断基準は、市民サーービスの拡充と、市民にとって必要な施設であるかどうかでなければならない。
 ところが久喜市においては、集会施設をはじめ、保育園や幼稚園も、図書館でさえも、市民活動にとって必要かどうかは、判断基準としては採用されない。
 久喜市の公共施設個別施設計画においては、単純に今ある床面積を10年後、20年後に何%減らすかという目標だけが掲げられている。
 それは、施設の必要性とか政策的判断をいっさい捨象して、維持管理費をいかに削減するか、公共施設そのものをいかに減らすかが、判断基準となっているからである。

本町集会所と東町集会所は5年以内に廃止

 そのひとつが、地域の集会所をどうするか、議員間の見解も分かれているように見える。
 旧久喜市で、市街地のまん中に、「本町集会所」「東町集会所」があって、いずれも築50年以上で老朽化も著しい。
 市はこの2つの集会所を廃止したくて、梅田市長当選後の最初の計画では、それぞれを地元の自治会(区・町内会)に「無償譲渡」して、地元管理に移管しようとしたのだが、それぞれの地元ではそんな費用を負担する余裕はないから、断った。
 ところが、梅田市長2期目になって今度は、「両施設とも5年後までに廃止」という方針を決めて、問答無用で廃止を強行しようとしているのである。
 当然ながら、地元の東町や本町地区では「廃止反対」の声が強く、存続を求めて「要望書」を提出した地区もある。

 市は、本町集会所の近くには「中央コミセン」があり、東町集会所の近くには「東コミセン」があるのだから、十分に代替機能は果たせると説明している。
 しかし、これらの施設はいずれも市民からはきわめて活発に活用されており、他地区からの利用も多いから、中央コミセンや東コミセンで、すべての利用者を満足させることはとてもできないだろう。
 市は、2つのコミセンで足りなければ、他の地区のコミセンや集会施設を使えばいいと言うのだが、市は市民活動を保障する必要はない、使えない市民が出ても仕方がないという開き直りとしか言いようがない。

 議会では旧久喜市の市街地の議員は、どちらかと言えば「廃止に反対」の声が強いが、周辺地区などそれ以外の地区では、無関心だったり、「廃止は仕方がない」という意見の議員もいるようだ。
 2月市議会では、市長が提案してきた「公共施設個別施設計画」=公共施設をどんどん減らしていこうという計画はみらいの会と公明党の賛成多数で可決された。
 この計画の中に、本町集会所と東町集会所を5年以内に廃止するという計画も、はっきりと明記されているのである。

「廃止に賛成」の春山議員の論理

 そんな中で、清久地区の春山議員は「廃止に賛成」の立場をブログに書きこんだ。
 「廃止に反対」する他の議員の発言に対して、春山氏がそれを批判した文章の一部を引用しよう。【一部、猪股注と読点を補ってある。】

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 東町集会所の廃止問題は、【ここから引用開始】 「市は建物が50年以上経ち老朽化しているという事、すぐ近くにある東コミュニティセンターを利用できるという事から除却対象になったと説明。
 この集会所は以前、地元に無償で譲渡するという案が出され(他の地域のほとんどが地元運営の集会所のため)、その時、地元からは久喜市で維持管理しないのなら無償でも地元譲渡は賛成できないとなった施設。」

「集会所の場合、市内広いですがほんの一部の人の利用する集会所だけ【猪股注/ここでは東町集会所のこと】維持管理運営全て、今後も久喜市が公金で運営し続けなさいというのは、市のアセットの考え方に加え、公平性の観点からもダメでしょ」

「私の地元【猪股注/春山氏は所久喜】はたった100軒くらいの世帯数しかない地域、そんな小さな地域でも集会所は地域住民が維持管理運営をしています。」【引用終了】
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 つまり春山氏は、地域の集会施設は地元管理すべき、他の地区でもそうしている、それと同じで、本町集会所や東町集会所も地元で管理すべきで、それがイヤなら廃止するのはあたりまえだと言うのである。

本町集会所・東町集会所と、地元設立の集会所の違い

 【A】確かに、市内農村部を中心に、多くの地区では昔から大字や小字などの集落ごとに「集会施設」を持って維持管理してきた。
 所久喜集会所、下早見○○集会所、上早見集会所、吉羽集会所などだが、その多くが神社の境内などに建てられて、地元の区や町内会、自治会で管理している。
 私の住んでいる青毛地区でも「五柱神社」の境内に集会施設があって、以前はよく地区の会合に使われていた。
 また、道合会館(本町六丁目)、東六丁目集会所、新二会館(南町)、愛宕会館(中央)など、旧久喜市の中心部の市街地で、地元で設立して管理している地区もある。

 【B】それらとは別に市が管理している集会施設がある。
 太田集会所、栗原記念館、花みずき会館(青毛)などは、区画整理の保留地に区画整理組合のお金で建設して、組合解散後に市に寄付された施設である。
 市は、公共施設個別施設計画で、これらの施設も地元移管を打ち出していたが、断られると、長期的に廃止していく計画としている。
 本町集会所や東町集会所は、久喜市が人口急増していて、市民活動が活発になっていった時代に、市街地の中で市民が広域的に自由に使える集会施設がなったので、市民の要望に応えて市が建設した施設である。
 当時、市街地には公会堂(現在の中央公民館)と東公民館しかなかったので、それらを保管する施設として、市が建設した。

 この2つの集会施設の違いは何か。
【A】の施設は、昔からの集落ごとの「地縁団体」の名義である場合が多く、管理も利用方法も地元で決定する。
 あくまでも地元優先の施設であるが、利用料を徴収して他に貸すこともあるようだ(地元議員の選挙事務所に使わせるケースも多い)。

 それに対して、【B】の施設は、公共施設であって、維持管理も利用方法も市が責任を持っていて、市民(市民以外でも)のだれでも使うことができる。 
 実際、本町集会所や東町集会所は、地元住民か地元以外かを問わず、市の公共施設予約システムで利用申し込みをすることになっている。
 活用状況を見てみると、平日の昼間はほとんどが使われていて、地元以外の住民からも広く活用されていることがわかる。
 だから、これらの施設を地元に無償譲渡しようとしても、地元が受けるわけはないし、廃止になって困るのは、地元住民だけではなくて、広く活用してきた広域的な市民活動団体が、貴重な活動の場の選択肢をひとつ失うことになるだろう。

 市は、こうした活用の実態を知った上で、無理を承知で地元譲渡を持ちかけ、地元から断られると「廃止」を強行しようとしているのである。
 それは市民活動を保障する考えはまったくなくて、単純に施設の維持管理費を削減することを優先する立場だからではないか。

 さて、春山氏は、【A】の施設と【B】の施設の作られてきた経過や、実際に地元や広域的な市民にどのように使われているか、その違いを知らないのだろうか。
 知っていて、地元優先の【A】も、広域的に活用されている【B】の施設も同一視して、地元管理すべきだと主張するのだとしたら、あまりにも乱暴だし、地元住民だけでなく広域的に活用されてきた市民活動の場が減ってもしかたないと考えていることになる。
 逆に、もしも春山氏が、【A】の施設、つまり地縁団体が建設して管理してきた集会所と、【B】の施設、つまり市民活動の場を拡大するために市が建設して管理してきた集会所、この2つの施設の基本的な違いを知らないでいるのだとしたら、「総務財政市民常任委員会」の現委員長であり、元議長として、あまりにも認識不足ではないか。 


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 さて、ここまで春山議員の名前をあげて真正面から批判してきたのは、議会の中で、公共施設をどんどん削減していくことに「賛成」という「議会多数派」の意見の代表格であるからだ。
 残念ながら、2月市議会でみらいの会と公明党が「公共施設個別施設計画」に賛成したのだが、その中の多くの議員が、市民にはきちんと説明しようともしていない。
 その中で、春山氏はある意味で正直に自分の考えを表明したことに敬意を表しながら、きちんと議員間の議論をすることが大事だと思うからである。

 【付記】
 これは春山氏の文章の「一部を切り取っての批判」ではない。
 そもそも春山氏のブログの文章自体が「部分的な」意見を書いたものではあるのだが、その書かれた文章そのものを正確に読み取って批判したつもりである。
 もしも批判が当たっていない、春山氏の真意を読み取っていないと判断された場合には、部分的な文章ではなくて、あらためて「全面展開」の反批判をしていただきたいものだ。

この記事へのコメント

  • ナガ

    2024年04月20日 18:57
  • 永田 智 ナガタ サトル

    久喜第9区(清光団地)区長の永田と申します。ふれあいセンターに会計年度職員として勤務している、髪がないじいさんです。宮崎あきさんの町内会で、17日に近隣区長と一緒に市長に要望書を持参した本人です。宮崎あきさんから、このブログを教えてもらいました。お話ししたいことがたくさんあるので、ふれあいセンターにいらした時に、ご挨拶させてください。よろしくお願いします。
    2024年04月20日 19:05